2014年7月9日水曜日

がてじの酪農体験記2

7月9日(木)




島田の朝は、早い。





いやー慣れましたよ、速攻で。

覚悟はしてたのでね、初日から4時半って言われても驚かなかったです。

グアテマラにいた時も、遅くまで仕事して、仮眠してまた仕事再開するなんてことよくありましたから。朝は何だかんだ頑張れます。



そう話すのは、ボラバイター島田翔平、アルバイト3日目だ。


大学卒業後、青年海外協力隊としてグアテマラへ派遣。3年間小学校教諭として現地の教員たちに算数を指導してきた。




島田が今いる場所は北海道天塩町のある農家だ。



WiMAXの電波も届かないこの街はアサリと酪農で有名である。




働かせて頂いてるところではauの電波すら入りづらいです。良くて1本ですね。

WiMAXの電波ないとメールとか、モバイル通信ってやつですか?それができなくて。

辛くはないですけど、連絡が途絶えてしまうので周りに申し訳ないですね。

メール確認できたと思ったら、とんでもない量が入ったりしてますから。しかもいつ確認できるかわかりません。一週間かそれ以上か。

けど、修行みたいでちょっと楽しいです。こういう環境も。

全部ひっくるめていい経験になってます。





まだ陽も出ていない早朝、空は薄く明るい。



おはようございます、よろしくお願いします。



挨拶を済ませ道具を握ると、まず始めに牛の糞を処分する作業から入る。



ここには90弱の乳牛がいる。



今ではほとんどが機械化され、あまり多くの人手を必要としなくてもこれだけの量を管理することができる。


牛の糞尿の処理と、わらで床を作る作業と掃除が最初にする島田の日課である。



昔であれば台車にスコップで集めた糞を乗せて運んでいたが、今はベルトコンベアーのようなものが牛舎の床を走る。


ただそこに落とせばあとは機械が運んでくれるのだ。


そして牛舎の壁を大型の機械がのんのんと移動している。


コンピュータで厳格に制御されているそれは、餌やり機である。


各一頭ずつに正確にえさが分配されていく。




もっと、重労働になると覚悟していたのでビックリしました。

けどやっぱ筋肉使う作業多くてしんどいですけどね。ははは



笑って答える島田だがやはりどこか眠たそうだ。




次は搾乳です。

これがメインの作業で、そしてやっぱまだ緊張します…

銀の匙って漫画読んだんですけど、あれよく作られてますよね。よく分かりますいろんなシーン。

そうそう!とかよくありました。

そしてあの牛乳のホース事件。

あれを読んじゃったもんだから、搾乳の準備中はあのシーンが頭から離れません。

あといろいろ大失敗のリアルな話を聞いているので失敗できないなってプレッシャーです。

機械だから手順とかもあるし、一つ間違っただけで90頭分のミルクが無駄になっちゃうんです。

命が関わる時は失敗は許されない。

本当にその通りだと思います。

牛の命、消費者の命、僕の指一本にかかる重みは相当ですよ。トホホ



作業を確認しながら、一つずつ進めていく。



緑の運転ボタンを押して搾乳スタートだ。



「あそこ二頭」



淡々と指示を出す牧場のご主人



はい。


そう短く答える島田は小さな雑巾にお湯を含ませ、指示された2頭の間に入っていく。



牛の乳首は基本4本だ。たまに3本のもいる。お湯を含ませた布で乳首を拭きながら同時にマッサージも行う。


ミルクを出やすくする為である。


その後、手で数回ミルクを絞り出し、専用のこし器に入れる。


乳房炎などにかかったりすると出したミルクもヨーグルトのような塊が取れたりもする。


そうやって牛の健康状態を診るのだ。



この作業がまた、大変で。

乳首にたくさん糞がこびれ付いてたりしたら時間かかりますし、全然取れないし、牛も暴れますし、どのくらいの力加減でとか、果たしてきちんとミルク出してくれるんだとか、心配事がぐるぐる回ってます、拭いてる時って。

ゆとりですから、怒られることに慣れてませんからね、ビクビクですよ、ハハハ



搾乳機も自動で移動する。それに合わせて乳房の拭き掃除や手での搾乳を行う。


初日は全然取ることができなかったと言う。


乳が出ないのもあるが、牛の方が落ち着かず触れることすらできないこともよくあったと島田は話す。


牛はとても繊細だ。臆病で、知らない人が近づくと脅える。


よく人を観ているし、きちんと把握しているのだという。


だから島田が近づくと脚で蹴ろうとしたり、暴れたりする。



たくさん尻尾ではたかれます。今でもですよ。

クソまみれの尻尾で顔面狙ってきますからね、汚いでしょ。慣れますよ、うん。

2日目から少しずつ落ち着く牛も出てきたし、コツとまではいかなくてもなんか乳搾り上達しました。

3日目終わって気づいたんですけど、家に戻ると指先がずーっとしびれてるんですよ。

何でかなって思ったら、搾乳中は立ち膝とかするんで、足の指先をずっと曲げてる状態が続くんですよ。それで指先じーん。気持ち悪いです。



「次そこ二頭」


はい。



このやり取りを数十回繰り返したところで、全ての搾乳が完了する。


6:50


ここから搾乳機を戻す作業がある。


島田にとっては最後の関門だ。


ここで失敗すれば取ったミルクが全て廃棄処分となってしまう。


一つもミスは許されない。


不安気な面持ちで作業をする島田。


手製のメモ用紙をいつも頼りに作業を進めるらしいが、今日に限ってそれを紛失したらしい。



結構焦ってます。

脳みそフル回転ですよ。

朝飯がうまいですね、こりゃ。



冗談を言うが、目は笑っていない。


終わりの作業は行程が少し煩雑である。タイミングも掴みづらく島田が一番苦手とする作業だ。



無事に終わったようだ。


最後にもう一度糞を片付け、朝の業務が終了する。




あー終わったー。

腹ぺこです。

けど、朝飯ワクワクっていう気分より、無事に最後の行程終わってよかったって安心感の方が強いです。ほんと、ヒヤヒヤ。

命が関わる仕事ですから、失敗は許されません。




おはようございます、只今戻りました。



島田が厄介になっているところは、雇い主の両親の家。


島田にとってはおじいちゃん、おばあちゃんの様な存在である。


お疲れさまです、と優しく声をかけてながら朝ご飯の支度を済ませるおばあちゃん。


タイミングはいつも完璧である。




毎食、お世話になってるんです。

なんまらうまいですよ。葉っぱとかイチゴは畑から取れたものですし、ヨーグルトはもちろん自家製。

これだけでもこの仕事選んでよかったって思えます。

うちの母親の方も農家だったんですけど、どうして農家さんて飯がうまくて豪勢で、いっぱいなんでしょうか。幸せです。



食事中の島田の顔には、さっきまでの不安は一切ない。



これからちょっと休んで10時半から仕事再開です。

休み時間が多いんですよ。

12時まで働いて、ご飯食べたら15時までまた休憩。19時くらいまでで一日の業務終了ですかね。

こんなルーティンです。

それでもご主人は僕の休んでる間にもっと働いてるんで、すごいです。僕もこんなんで根をあげたらだめだなって思いますよ。身体バッキバキですけど、頑張りたいですね。

というわけで次の仕事までエネルギーちょっとためてきますね、ごちそうさまでした。

おやすみなさい。





つづく

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